世界が終わる音を聴いた
「……嫌だよ。嫌だ、死にたくなんかなかった。もっと生きたかった!」
「……それをどうしてもっと早く、言えなかったんだろうな」
あどけなさの残る少年は、泣いていた。
きっと元々とても素直な、心のきれいな少年だった。
だからきっとチャンスをもらえたんだろう。
何処かにいるかもしれない“神”ってやつに。
隣の紳士は感嘆といった様子でこちらを見ている。
きっとまだ、この仕事に不馴れなのだろう。
この姿の見た目と、この仕事の年数は合致しないから、それは全く不思議でもない。
この姿はどんなに時間が流れていても、命を終えたときのままだからだ。
「お前の魂の末路を知っているか?考えたこともないだろう」
「今度はなに?地獄にでも落ちるというの?」
「お前たちのいう地獄や天国と言うのとは違うだろうな。本来、生を終えた命は器と魂と霊体と分かれ、それぞれのあるべき場所へと還っていく」
少年はさっきまでの激昂や涙を忘れて聞いている。
「器は土に、魂は次の生を受けるためにあるべき場所へ、霊体は空気に、それぞれ還っていく。だがな、お前。ろくな死に方をしなかったものは霊体がその魂を引きずり込み永遠に生まれ変わることもできずに苦しみ続けることになるんだよ」
「つまり、僕は」
少年の瞳が揺れている。
それを見て言葉を繋いだのはずっと見守っていた紳士。
ここからは優しく説得をすれば良い。
今の姿ならば少年はきちんと彼の言葉を聞き入れるし、なにより本来ならば、もともとこの少年は彼の仕事だ。
俺は黙ってその様子を見守った。
「今君の元の体がわかるかい?周りに泣いている人が居るだろう」
「父さん、母さん。……花守くん?」
「その姿を見て、君は何を想う?」