世界が終わる音を聴いた
少年はいよいよ泣き出して、少しずつその内側から光が漏れる。
「大丈夫だよ、君。その魂に、今生の記憶は刻まれる。彼らもまた同じように還るときが来る。そしてまたどこかで同じときを過ごすことができるかもしれない」
光に包まれていく少年はやがて霊体と魂とが分かれていく。
あるべき場所へ還り、また、その場で霧散する。
それを見届けて紳士は言った。
「君にはチャンスがある。その時まで彼らを見守ってあげると良いさ」
俺はその言葉に静かに頷いた。
互いの胸にぶら下げられたペンダントが揺れる。
紳士はこちらを見て、ありがとう、と呟いた。
「よく、昇れたな。手伝ってくれてありがとう」
「いや。自殺には違いなかったんだろうがな。それでも、生き残った、生きることを諦めなかったことが救いだったんだろう。きっともともと、きれいな心がちゃんと残ってたんだろう」
「違いない。……自殺など、ろくなものじゃないさ。なぁ?」
「そうだな。このようになってからしかわからないこともあるがな」
紳士は神妙に頷く。
「しかし、色々やり方があるものだな。勉強になったよ」
「命がある限り続くことだ、ゆっくりやると良いさ」
そう言ってお互いに笑い合う。
神がもしいるとして、それが嫌うのが“自殺”だったんだろうと思う。
だから俺たちは今、こうしているのだ。