世界が終わる音を聴いた
The old days
ルナは気の強い子供だった。
田舎ではあるものの由緒ある旧家の娘だったが、その容姿は美しいながらも、行動はお転婆で男の子とばかり遊んでいるような珍しい娘だった。
もちろん女の子の友達もいなくはなかったが、彼女のお転婆っぷりには少なからず呆れた視線を送っていたと思う。
「あなたたち、ハデスがキレイで僻んでいるんでしょう」
「そんなこと無いさ。貰われっ子が羨ましいことなんてひとつもない」
「そうだそうだ!」
「それなら一緒に遊んだって良いでしょ?」
「やだね!アイツがいるなら遊ばない!」
「ほらやっぱり!僻んでいるのよ!」
「違うやい!ルナのばーっか!」
「その変な黒髪が戻ったら遊んでやるよ!」
「こら!あんたたち!」
12歳になるルナは、良家の娘らしく美しく育っていたが、俺と言う存在が現れたことで、それまでの良好だった少年たちとの関係が少し変わったようで度々こうして口論になっていた。
くるり、亜麻色の髪を靡かせてルナはこちらをみる。
人差し指をまっすぐ突き立てて、俺を指差す。
「あなたもよ、ハデス!ちゃんと自分の意思を持って!あなたは人形なんかじゃないのよ?」
「俺は別に……」
「黒髪が変だなんて、馬鹿げてる!だってとってもキレイじゃないの!」
「この街では、黒髪は変なんでしょう。……ずっと言われてきたことだ、お嬢さんは気にしなくても良いですよ」
「あなたは何を言われてもいい人じゃないの。何を言われてもいいなんて人は居ないのよ?人はみんな同じなんだから。たとえ髪の色が違おうとも、ね」
ふわりと笑うルナは美しく、太陽が輝くように眩しい。
彼女はただお転婆なだけではなくて、まっすぐに正義感のある女の子だった。