世界が終わる音を聴いた
ヒナちゃん、あのね。
今週末、学くんが来るんだって。
嬉しい?
でも菜々美さんも一緒だって言ってたから、ヒナちゃん的には複雑なのかな。
それとも好きな人の幸せは見守れるものなの?
あのね、ヒナちゃん。
……私、学くんのことが、好きなんだよ。
ヒナちゃんの彼氏として知り合ってから今年で6年。
病気になったヒナちゃんを、側でずっと支えてくれてた姿も見てきた。
ヒナちゃんが遠くへいってしまってからも、同じ会社でずっと見てた。
好きだなって気づいたのは、もっとずっと後だけれど。
こんな私でも、ヒナちゃんは私を妹として大切に思ってくれてる?
答えてくれる人は、いない。
問いかけも想いもすべて私の心に閉じ込める。
この気持ちを伝えたところで、誰も幸せになんて、なれないんだから。
流れていた涙も、いつしか止まっていた。
風がカーテンを揺らす。
太陽はとっくに沈んでいたようだ。
「千夜子ー、ごはんー!」
母の呼び掛けに目元を拭って、部屋を出た。
そしていつもと同じように、仏壇に手を合わせる。
今日だけは、真正面から見るのが、なんだか辛い。
故人が人の心にいるというのなら、私の気持ちなんて明け透けなのかもしれないけれど。
落ち着かないその気持ちを隠すように、いつもより深く、ゆっくりと手を合わせた。