世界が終わる音を聴いた

そうか、そう思えばなんとなく飲み込める気がする。
生まれる前の記憶を持つ子どもたちは、みんな、親を選んで産まれてくると言う。
あの人の元に降りたいと願い、そして産まれてくる。
それだけではなくて、この人生を生きると道筋さえも決めて誕生するというのか。

「なんか、すごい話だね」
「輪廻転生というのか、ここでは」
「あぁ、うん。正確には輪廻転生って仏教思想だったと思うけど、そういう意識はあるよ」
「すべての命は、器と霊体と魂とでできている」

ようやく整理のついてきた頭が、また疑問を浮かべる。

「魂と霊体は別物なの?」
「別物だな。魂はそのものが光満ちるまで何度でも命を繰り返す」
「霊体は?」
「その器に宿るものだ。命を終えるときに、大方の魂は在るべき場所へ戻り、霊体は霧散する。死んだ後もその存在を近くに感じることがあるだろう?それは霊体だ。ただし、魂にも記憶は刻まれる。これが前世と呼ばれるものだ」
「……なんか、複雑なんだね」
「それが複雑かは知らんが、お前、自分もそうなんだぞ」
「あ、そっか」

何でこういうときって、自分は例外みたいな解釈しちゃうんだろう。
言われてみればその通り、ハデスの言うことを信じるならば自分だってそういう風にできているんだ。
不思議なものだ。

「自分に魂だの霊的なものだの、感じたこともないのに」
「それが普通だ。器と霊体と魂とで命はできているといっただろう?繋がっているんだよ。一体化してるんだ、感じることなど無いだろう」
「霊感がある人とかは?」
「まぁ、それなりに感じることもあるかもしれないが」
「そんなもんなのか」
「陽奈子も、ちゃんと魂は在るべき場所へ戻って、霊体は霧散した」

唐突に出てきた姉の名前にぎょっとした。
なぜ知っているのか?疑問を持ちかけて、ハデスならば知っていておかしくないのかもしれないと納得した。

「空気に溶けているから、いつもお前の近くにいる」

急に優しい声になるから胸が熱くなる。
ヒナちゃん、そこにいるんだ。
話しかけたって声は聞けないけれど。
返ってこないその声を想うと、未だに切なさが込み上げるけれど。
そこにあなたはいてくれるんだね……。


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