世界が終わる音を聴いた
そしてふと気づく。
ヒナちゃんが、亡くなったとき、その生き方に涙した。
病気が分かってからも、絶対に諦めなかった人。
とても優しかった人。
時にはそんなヒナちゃんを見るのが辛くなることもあったけれど……
でも、いつも笑顔をくれた人。
だから今でも、私は、……私たちは笑ってヒナちゃんの話ができる。
あぁ、だからか。
だからハデスは、わたしに猶予を与えに来たのか。
後悔するような生き方をするな、と。
周りがいつまでも引きずるような死に方をするな、と。
「ハデス、さっき大方の魂は在るべき場所へ戻って霊体は霧散するって言ったよね。じゃあ、そうならなかった……戻ることができなかった魂もあるんだよね?」
「そうだな。……執着が強いもの、自ら命を絶つものはそこに留まることになる」
渋い顔をしている。
なにか嫌なことでもあるのだろうか。
「上手に霧散しない霊体は、その魂までも引きずり込むんだ」
「どういう意味?」
「そのままだよ」
「そのまま?」
「地縛霊とか、聞いたことはないか」
「あぁ」
「執着が強いと、霊体も魂もそこに留まる。未練、というか、その執着が解けるまで進むことも戻ることもできない、いつまでもそこにいることになる。無論、魂が生まれ変わることもできない」
それってただただ、辛いだけじゃないか。
生きているときにどんな風だったかはわからないけれど、生きていた時間よりも遥かに長い時間、苦しみを抱えて過ごすかもしれないというのだ。
「……ハデスは優しいね」
ポツリと呟くと、ハデスはきゅっと目を細めた。