世界が終わる音を聴いた
「千夜子ー、おりてらっしゃーい」
階下から母の声がする。
気がつけば時は流れ、外はもう暗かった。
時刻は19時30分。
すっかり先程の出来事を飲み込んでしまった私は、どうやらあのあと固まっていたらしい。
窓も閉めていない。
カラカラカラ、と窓を閉めて、カーテンも閉じる。
そうして改めて数十分前のことを思い返す。
「命の期限、あと、1週間……」
呟いてみても現実味を帯びない。
さっきの出来事はとてもリアルだったというのに。
コンコン、と部屋の扉がノックされて直後、返事も待たずに扉が開く。
「お母さん、それノックの意味……」
「あるある。開けるわよって合図よ」
「着替えでもしてたらどうするの?」
「あんたの着替えなんて!男の子連れ込んでるわけでもないんだから」
その言葉にはぐうの音もでない。子供はいつまでも親には勝てないと思う。
「……お母さん、私の命、あと1週間なんだって」
さっきまでと同じ軽いノリで言うと、母は軽く顔をしかめたあと、すぐに笑い飛ばす。
「あんたの冗談には付き合ってらんないから。バカ言ってないで、早く降りてらっしゃい。お父さんも帰ってきてるよ」
そう言い残して部屋を後にする。
「冗談……では、ないんだけどなぁ」
聞こえないように呟いて、私も後に続く。
バカみたいなことだとは思うけれど、それはいたって真面目なことで現実感はないけれど現実で。
冗談ではなかった。
“彼”が言うことを信じるならば、だけれど。