世界が終わる音を聴いた

「……はい」
「本当ね!絶対よ?」
「そうですね、きっと」

私の返答にようやく満足してくれたのか、少し笑顔に戻して手を振ってくれた。
私は会釈を返して、もうすっかり暗くなった街を歩く。
やっぱり夜の街にはストリートミュージシャンで溢れていて、とても賑やかだ。
彼らにとっては雑踏も、他のミュージシャンの音も響くここがステージ。
プライドを持って歌っている彼らは多分、そこに例え立ち止まる人々がいなくても輝いている。

電車に揺られて、地元の駅まで戻り、ふと空を見上げると、そこに広がる漆黒の闇。
今日の闇夜はそう表現するのが相応しい。
雲一つ無いそこにぽかりと浮かぶ、キリリとした輪郭の満月。
月明かりと地上のネオンとで目視できる星の数は僅かだ。
この漆黒の闇は、月が輝くためのキャンバスか、あるいは……

呑み込まれそうな程の闇からスッと輝く月が私を照らしている。
そんな錯覚を覚えるほどに自転車に乗ることも忘れてぼんやりと空を見上げていた。
私もあの月のようになりたかったのだ。
唯一無二の、あの月のように。
昔の自分は、輝きに満ち溢れた未来を夢見ていたんだろう。
今はそんな夢の見方すら忘れてしまった。
空に浮かぶ幾千の星の中で目視できるのは六等星までだと言う。

それなら、輝くことすらできない今の私はきっと闇に紛れてしまう塵と同じ。
月になるには、ほど遠い。
見上げた夜空に浮かぶ小さな星は、幸せを歌っている。
私は何を歌えるだろう?
さっきと同じ疑問は、答えを持たないままだ。


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