世界が終わる音を聴いた

Day 5*込み上げる寂しさに手を振った


月になりたいと思っていた。
唯一無二、輝く月に。
太陽にはなれないと思っていたから。
私にとって、ヒナちゃんが太陽のような人の象徴だったから。
けれど私は、星にさえなれないと知った。
無数に輝く星屑にさえ。
それはたぶん、以前の私からしたらとても落胆すること。
きっとそれを見せないようにするために、何でもないふりをするほどに。
今の私は?と問われると、自分でそれを認められる程度には素直になれた気がする。
暗闇がなければ月も星も輝けない。
明けない夜はないというけれど、沈まぬ太陽もない。
影がなければ光の存在は知られることはない。

分厚い雲を掻き分けて一筋の光が地上へと降り注ぐ、それを美しいというのなら。
暗闇の中、揺れる水面に写る月影が美しいと思うなら。
空も、雲も、太陽も。
闇も、水も、月光も。
すべては必要な要素なのだ。
その必要な何かにいつか私もなりたいと思う。
けれどそのいつかは私には分からない。
おまけに私には時間もない。
私は……、私の価値は誰が決めてくれるのだろう?
私がそれを知ることは、この先きっとないのだろうけれど。

どれだけ頭を悩ませようとも、もがいていても、時間は皆に同様に流れ、日は登り朝は来る。
誰が生き、死に、喜び、悲しみ、世界が凄惨な事実に包まれようと、時間は巡る。
今日も街は朝焼けに染まる。



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