世界が終わる音を聴いた
「早いわね。もう5年も経つのね……」
「そうだな」
会話を交わす両親に、私もほどなく居なくなってしまうことをどうして言えようか。
自ら命を絶つわけではないけれど、その事実を知ってしまっている今、どうしようもなく申し訳なさが襲う。
この人たちが悲しまない手立てはないのか?考えてもそんなこと、わかるはずない。
どうしようもない気持ちが込み上げて、瞳が熱くなる。
けれどそれを悟られるわけにもいかなくて、私は会話に混ざることなく、口を閉じていた。
私の誕生日の2日前。
つまり、今日はヒナちゃんの命日だ。
「さぁ、朝ご飯食べたら暑くならないうちに、お墓参りにいっちゃいましょ」
私たちは食卓を囲み、和やかな時間を過ごす。
湯気のたつコーヒーと、ジャムトースト。
ゆで卵にワカメ入りのサラダ。
貴方がいない世界でも時間が流れるように、私がいない世界でも、時間はきっと流れていく。
それはでも、きっと、悲しいことなんかじゃなくて。
寂しくなるようなことでもなくて。
ただ、今と同じように共に同じ時間が流れていくだけ。
そうだよね?
朝食を終えると、私は食器を洗い、母は洗濯物を干し、父は慣れない掃除機をかける。
3人それぞれに役を終えると、時刻は9時になろうとしていた。
軒先には向日葵が元気良く咲いている。
今日も暑い1日になりそうだ。