世界が終わる音を聴いた

有給の申請は急だったにも関わらず、あっさりと許可された。

「珍しいね、芦原さんが。うん、今は落ち着いてる時期だし大丈夫だよ」

にこにこと人の良さそうなおじいちゃん上司がそのように言ってくれた。
ありがたい。
そうと決まれば明日私が休んでも支障がでないように段取りを組みつつ今日の仕事を……と考えて、また苦笑しそうになる。
もうここにも私、来れないんだ。
好きな仕事か?と聞かれたら、どうだろう?でも案外、嫌だったわけでもなくて。
職場の上司、同僚にも恵まれていたし、悪くはなかったのかもしれない。

自席に戻り、取り立てて急ぐこともなく、いつも通りの仕事をこなしていく。
ルーティンとなっているそれは、もちろん目を走らせることやチェックはするものの、もうひとつどこかに意識があってもすんなりと手が動いていく。
この6年で仕事にも慣れた。
新人の頃より与えられるものは重くなってはいるけれど、ひとつひとつのステップを確実に上っていたら、ここにたどり着いていた。
それは職場でのひとつの成果なんじゃないかな、と思う。
そんな感じでぼんやりと、でも確実に仕事を進めていくと、いつの間にか時間は流れるもので、お昼の時間になっていた。

「今日は食堂行くかな」

お昼休憩は外に食べに行くことと、食堂を使うことが3:7くらい。
理由は簡単なこと。
美味しいものを食べたければ外に出る、以上。
共同食堂はそれらしく、定食に麺類にと取り揃えてあり金額もお財布に優しい。
そこに劇的な美味しさを求めるのは酷なものだ。
安っぽくても慣れ親しんだ味。
毎日のご飯はそれで十分だと思う。
だって、毎日フレンチのフルコースはとてもじゃないけど食べられないもの。

私は仕事にキリをつけて、お財布を持って立ち上がった。

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