世界が終わる音を聴いた
それは今日のようにこの食堂で、みんなが集まっていたところに私と花守さんが合流して、これもまた同じように誰かが思い出したようにお誕生日を祝ってくれた時のこと。
その時たまたま、みんなでデザートを食べようとコンビニ食だった子が小さなケーキを買っていて、ありがたいことに、そのケーキが誕生日ケーキに化けた。
ろうそくなんかはなくて、みんなでつついて食べることには変わりはないけれど、気持ちが大切。
はしゃぎ合うその時間が楽しかった。
そんな楽しい、私たちに気づいた学くんが引き寄せられるように、ひょっこりやって来たのだ。
『何してんの?』
『プチ誕生会ですよ、芦原ちゃんの』
『そりゃめでたいね。芦原さん、いくつになったの?』
学くんはそのままナチュラルに空席に腰かけた。
『女性に年齢聞くなんて大石さん、失礼ですよ』
おどけて返すと、皆笑っていた。
それからすぐに、花守さんと付き合っていることを知っていた同僚は気を効かせて、化粧直しに、と先に席をたった。
そしてタイミングを見誤って座ってしまった学くんはまだそこにいたまま。
賑やかだったさっきとはうってかわった落ち着いた空間。
満たされたお腹と、冷房が効いた室内で窓から降り注ぐ陽気に午後からの仕事が眠たくなりそうだと気合いを入れ直した直後。
まるで、天気の話でもするように、ごくごく自然に花守さんは言ったのだ。
『別れようか、俺たち』
そんな話をしたこともなかった私たちは、順風満帆とはいかなくても、穏やかに付き合っていた方だと思う。
けれど、それはあっけなく、簡単に手からすり抜けていった。