世界が終わる音を聴いた
顔に何故?と書いてあったのだろう私に、花守さんは『分かるだろ?』と、言ってきた。
心のどこかに燻っている何かを、私よりも分かっていたのだろう。
花守さんに恋をしていたら、すがることはできたのかもしれない、けど。
私はただ冷静にそれを受け入れた。
もしかしたら私は、花守さんがそう言ってくれるのをどこかで待っていたのかもしれない。
自分では言えないけれど、彼から言ってくれるのを。
花守さんに誠実でありたかったから、という、言い訳のもとで。
『友達に戻ろう。……な、芦原』
そう言って花守さんは席を立ち、そこに残されたのは私と学くんのふたり。
去っていくその後ろ姿に涙も出なかったのに、横にいた学くんに触れたくて、触れてほしくて仕方がなかった。
そんなこと、できるはずもしてもらえるはずも、なかったけれど。
花守さんの後ろ姿を見つめ続けた私に、ショックを受けていると思ったのだろう学くんは、どこからか小さな猫のぬいぐるみを取り出して、私の手元に置いた。
猫はつぶらな瞳で私を見上げ、不意に心が重くなる。
「誕生日、おめでとう。貰い物で悪いけど、あげる」
くれたのはお祝いの言葉と言う慰めで、なんだかちぐはぐだと思ったけれど、そんな彼が好きだ、と思い知らされた。