ビンの中の王子様
(1)運命の出会い
ビンの中に王子様がいた。

「なーんーでー?」

砂場の真ん中に座り込んで、裕香は首をかしげた。
手に持った赤いスコップで、ビンをつんつんしてみる。

「なーんでなんで、なーんでぇ?」

どうしてこんなものが幼稚園の砂場にあるの?

不幸なことに、周りにはその疑問をいっしょになって考えてくれる友達も先生もいない。

みんなは教室で先生のヘタなピアノを伴奏に歌っている頃だ。

裕香はただいま脱走中である。

こんなに天気がいいのに好きでも嫌いでもないような『お友達』と、変な歌を歌わされるのはまっぴらごめんさ!

裕香はそんな幼稚園児だった。




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