ビンの中の王子様
さて、ビンの中で王子様は右往左往していた。

顔が引きつって大きく開いた口からつばをとばして、大騒ぎ。

ビンの高さは、裕香のお父さんが毎晩飲んでいるビールの缶くらい。
形はビール瓶。
丸くて透明で、ちょうど目玉焼きの黄身ぐらいのコルクが栓になっている。その中にビンより小さい王子様が入っていた。動いている。生きているらしい。

裕香がひとめで彼を王子様だと見抜いたのにはわけがあった。

夕べ、お母さんに読んでもらった『人魚姫』の王子様に、彼がそっくりだったからだ。
金髪だし、目もブルーだし、小さいけどけっこうハンサムみたいだし、銀色の冠までかぶっている。

でもなぜか上半身は白いタンクトップ。

きっと暑いからに違いない。

さらにその下は、青と赤の縦じまの入ったチョーチンブルマーにシロタイツだ。
これは王子ポイントが高い。
しかも腰に銀色の剣を下げている。

ちょっと見は、ただの縫い針にしか見えないが、確かに剣である。絶対そうだ。

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