ビンの中の王子様
裕香は両手を腰にあてて、すっくと立ち上がった。
得意の“おかんむり”ポーズだ。

「ちょっとあなた、人に助けてもらったら、ありがとうでしょう!まったくほんとに、失礼な人ね!!」

 裕香のパパがこの場にいたら、「ああ、この言い方も立ち方も、ママそっくりだよ」
と、ちょっとため息をついて言っただろう。

しかし、王子様はパパのようにひるんだりしなかった。

「何がありがとうだクソガキ!ブンブン振り回すだけ振り回しやがってクソガキ!もう少しで頭蓋骨陥没であの世に行くところだったんだぞ

クソガキっ!!」

んまああああああ!あきれるわ!
なんて大人気ない王子様なの?

いやまてよ。

そこで裕香は気がついた。

そもそもこの世に、口の悪い王子様なんているのだろうか。
王子様っていうのは生まれたときからマナーに厳しい教育係がついて、悪い言葉を覚える暇のないほど、王子としての立ち居振る舞い、言葉使いを叩き込まれるものじゃないんだろうか。

「あなた・・・・」

裕香の丸い顔が険しくなる。

「偽者ね!王子様じゃないわねっ!」

「だから、さっきからそう言ってるじゃねーかっ!」

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