偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「子供が欲しいなって思ったから」
「…わかりますよ? 女だったらそう思う人多いです」
「私、家族が欲しいの。
男の人は去って行っちゃう可能性あるけど、子供ならずっとずっと家族として傍にいてくれるでしょう?」
最初は頷いていてくれた知香ちゃんが、手にしていたジョッキをそっとテーブルに置く。
「美衣子さん、その考え方は…どうでしょうか…」
「…え?」
「自分が産んだ子供だって一人の人間ですよ。美衣子さんの所有物じゃありません」
「わ、わかってるけど…」
「その子にはその子の人生がありますから、いずれ巣立っていきます。
ずっと自分の傍にいてくれるわけじゃないんです。
誰かに傍にいてほしいから、寂しいから、子供を産みたいんですか?」
「………」
そうだ、と言ったら、知香ちゃんは怒るだろうか。
いや。否定しなかったんだから肯定したも同じだ。
だけど知香ちゃんは真面目な顔で穏やかさを保ってくれている。大人だ。