偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
待ち合わせの時間に指定された駅に向かうと、改札の外で柳原さんがすでに迎えに来てくれていた。
「…仕事か」
「へ?」
「何の研修に行くんだよ、そのスーツ」
開口一番彼はそう言って、クスクスと笑う。
コノヤロウ。人の気も知らないで!!
思いきりムッとした顔になってしまったけれど…。
いかんいかん、こんな顔では。
眉間に皺なんて寄せてられない。
嘘くさくても笑顔を作っておかねば。
「行きましょうか」
目の前の男に満面の笑みを施すと、怖っ!と返された。
………殴り飛ばしてやりたい。
待ち合わせの郊外の駅から10分ほど歩くと、閑静な住宅街の中に柳原さんの実家はあった。
ちょっとばかし古風な、日本建築って感じのおうち。
玄関先の道路まで枯れ葉一枚落ちていない。
きちんと清掃が行き届いている。