偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
柳原さんが合図のつもりかインターフォンを押しつつ自分で門扉を開けて敷地の中へ入る。
すると玄関の扉が開いて中から男性が出て来た。
「弟の喜一」
振り向きざまに呟くような声音でそう紹介され、私は慌てて「初めまして」と頭を下げた。
弟さんか、なるほど。
柳原さんと少し顔だちが似ている。
玄関先まで入ると、お家の中から綺麗な格好をした女性が出て来た。
誰だろう?
今日はお母様と弟さんだけだと聞いていたはずなのに…。
「初めまして。響介の母の真知子です」
なんと!……嘘でしょう? お母様にしては若すぎる!
私と大して歳が違わなく見えるんですが。
「は、初めまして。柴本美衣子と申します」
「響介から話は聞いていますよ。上がってください」
靴を脱いで上がろうとする私に、柳原さんが何かそっと耳打ちしてきた。