偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「新居、探すか? それとも俺のマンションに越してくるか?」
駅までの道すがら、柳原さんはいつもと変わらないテンションで話しかけてくる。
私が意気消沈していると気づいてないのだろうか。
私、そこまで図太くないんですよ。
図太くないどころかチキンなんで。
「………い、……てる……か? 美衣子!」
「…え?」
「聞いてないだろ、俺の話」
「はい」
「はいじゃねーよ。ちゃんと今から名前で呼べよ?」
「名前?」
「結婚するんだから、俺の事、響介って呼べ」
KOされてヘロヘロなときに、そんな提案してこなくても。
そんな風に思ってしまったら、溜息しか出なかった。
「私たち、結婚……するんですか?」
「は? するに決まってるだろ。何度も言うがこれは決定事項だ」
そこだけはどうしても揺るがないんですね。
そりゃそうか。この人にとってはゲイを偽装するという目的があるんだから。