偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「いや…まだ結婚はしてないんだけど…ね」
それに比べて私はどういう表情で話したらいいのかわからない。
作った笑顔が自然にこわばっていく。
だって兼古くんは……
柳原さんと付き合っていた元カレ?
この場合は『カレ』という表現でいいのかわからないけども。
とにかくそういう関係だったんだから、私のことを内心よくは思っていないだろう。
なんだかとっても複雑だ。
「あれ? 指輪、してないんですか?」
「…指輪?」
「婚約指輪ですよ。渡されたでしょう?」
あぁ…プロポーズのときに渡されたダイヤの指輪ね。
一度もはめずに、とりあえず家で保管してありますよ。
「せっかくだからしてくださいよ。
柳原さんしつこいし、俺もけっこう頑張ったんですから」
「……え?」
どういうことでしょう?
頑張ったって何を?
「兼古くん……何か知ってるの?」