偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
その口ぶりからして、あのダイヤの指輪について彼が何かを知っているのは明白な気がした。
私がおそるおそる投げかけた質問に、兼古くんの口元がニヤニヤと不規則に緩んでいく。
「知ってるも何も。俺が手配したようなもんですから」
「どういうこと?」
「俺、宝石を取り扱ってる知り合いがいるんです。
柳原さんがそれ知ってて、俺に口利きしろって言ってきたってわけですよ」
「……口利き……」
そうだったんだ。
あの指輪は、兼古くんが知り合いの人に頼んでくれたんだ。
当たり前だけど、そんなこと全然知らなかった。
「あれ、既製品じゃなくてセミオーダーだから、ほんとは1ヶ月くらい納期がかかるんです。それなのにあの人、納期急いでくれって無理言うし」
眉間にキュっとシワを寄せつつ、そのあとまた爽やかな笑顔を見せる兼古くんだけど……
「早くプロポーズしたかったんでしょうね。
指輪出来上がりましたよって言ったら、嬉しそうにテンションあげちゃって。
ま、そういうことなんで、今度俺にも指輪つけてるとこ見せてくださいよ」
本当は、笑える心境じゃないんじゃないだろうか。
本当は、嫉妬や絶望や…いろんな感情に押しつぶされそうになってるんじゃないのかな。