偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~

「ていうか、俺こんなに裏事情喋っちゃってるのバレたら柳原さんに殺されそうですね!」


なのに兼古くんは私の前でも、ワハハと声に出して笑い飛ばしてくれてる。
そんな彼を見ていたら、私は到底作り笑いも出来なくなってしまって…。


「兼古くん、ごめんね。…ごめんなさい。
あなたに辛い思いをさせるつもりはなかったの。本当にごめんなさい」


私さえいなければ。
彼にとって私はそんな風に思われて当然の存在なのに。
そう思ったら、謝りの言葉を述べて自然と頭を下げていた。


「え。いきなりどうしたんですか?」

「だって……兼古くんは柳原さんのこと……」


好きだったんでしょう?
と言いかけて、周囲を歩く人たちが気になり言葉を止めた。
しかし彼は私の言いたいことを察してくれたようだ。


「あぁ…バレてたんですね」

「うん。社内で噂になってたから」

「はは。ゴシップって怖いですね。すぐ広まるから」


普通に考えたら、彼の恋人だった柳原さんを私が奪い取って結婚するって構図になるのだ。
これは略奪だ。

彼はどれだけ辛いだろう。
どれだけ悔しいだろう。

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