偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~

気が付けばすっかり夜中になっていて。
私と晴美はお互いギリギリ終電に間に合う形でそれぞれ電車に乗った。

最寄駅からとぼとぼとアパートへ歩く途中も、先ほどのことが頭のなかをぐるぐると駆け巡っていた。

結婚話があるだなんて、晴美には到底言えるわけもなく。
かといって、自分で急いで結論を出そうとしたって出るわけもなく。

胸の中はすっきりとせずにモヤがかかったまんまだ。


「どこへ行ってたんだ。こんな夜中まで」


私の住むアパートの前に大きな人影が見えた。
不審者かと思って一瞬ビクっと肩を震わせたのだけど…


「柳原さん……」


背の高い男の正体は、柳原さんだった。


「ここで私を待ってたんですか?」

「質問してるのは俺だ」

「…友達と会っていました」

「夜中に女が一人でふらふらと歩いて、危ないとは思わないのか?!」


怒っているのだろうか。
そうじゃないにしても、機嫌が悪いことは間違いなさそう。

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