偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「何か用事があったなら電話してくださいよ」
「したけど繋がらなかったんだ!」
「え……」
バッグの中からスマホを取り出してみると、電源が入っていない。
どうやら充電切れのようだ。
「すいません、充電が…」
「アパートまで来てみたら部屋の灯りはついてないし!」
言い訳めいたことを口にしようとするも、柳原さんはそれを遮って言葉を重ねる。
「変な男にあとつけられたりしなかっただろうな?」
「あ、あの……」
もしかして。もしかするとだけど。
これって………
「もしかして、心配してくれたんですか?」
思い浮かんだことを口にしてみたけれど、柳原さんは高笑いして否定するだろうか。
「当たり前だろ!!!」
全然否定なんてしなかった。
それどころか柳原さんは私の腕を取って引き寄せ、力いっぱい私を抱きしめた。
こんなに力強く男性から抱きしめられたのは、生まれて初めて。
柳原さんの胸にすっぽりとおさめられた状態で思う。
私がどこかで野垂れ死にしそうになったとしたら、この人はきっと探しに来てくれるだろう。
その程度の“人間愛”くらいは持ってる人だ。
そこは信用できると思う。