偽装結婚いたします！～旦那様はイジワル御曹司～

「…美衣子！ 偶然だな」


会社帰りにふらりと立ち寄った近くのショッピングモールで、私は意外な人物と遭遇してしまった。


「……茂人」


二度と会うつもりもないし、偶然にだって会いたくなかった人物。
元カレの茂人だ。


「久しぶりだな。元気だったか？」

「え、ええ」


私が付き合っていたころと比べると、少し落ち着きが出た印象。
年齢のせいかな。
それと、少しばかりあの頃よりもふっくらしたせいもあるのかも。


「どっかでコーヒーでも飲まないか？」


何を考えているんだろう、この男は。
こうやって、自分が振った元カノに偶然出会ってしまったとしたならば、微妙な顔になったりするものだろうに。

……何故に普通に笑顔。

……何故に普通にお茶に誘う。