偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~

「いや、あれはその……」

「あ、そうだ。その前に訊かなきゃでした。
彼氏? みたいな人とは終わったんですか?!」

「あのね、それもちょっと違うっていうか……」


圧倒されてまごまごと慌てる私をよそに、知香ちゃんは美味しそうにビールをぐーっと煽る。

この件に関しては私が以前、誤解されるような言い方をしたのも悪いんだけど……
どこから話そうかな。正直言いにくい。


「その人はお友達っていうか、彼氏じゃなかったのかなぁ……」

「付き合ってたわけじゃなかったんですか? でも仲良くしてるっぽいこと言ってたじゃないですか」

「仲良いって言っても、会ったことないからね」

「はぁぁぁぁあ?!」


お通しで出て来た煮物を口に含んだまま、知香ちゃんが大きな口をあけて驚きのあまり奇妙な声を上げた。

それは……そうなるよね。
だって私、それは言ってなかったから。


「会ったことないって、一度もですか?」

「うん」

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