夢の終わりで、君に会いたい。
きっと、悪いのは私。


誕生日だからって調子に乗ってはやくリビングに来てしまったから。

いつもと同じ時間なら部屋でお父さんからの電話も取れたはずなのに。

私のせいで、お母さんを怒らせ、お父さんに嫌な思いをさせている。

ボタボタと落ちる涙で歪んだ視界に、お皿に乗せられたパンが映った。


「コゲを取れば食べられるでしょ。お母さんゴミ捨ててくるから」


さっきより鋭さを丸めた声に、怒りが少し治まったのを知った私は、何度もうなずいた。


「うん。ごめんね」


声をしぼりだした時には、もうお母さんはゴミを持って部屋から出ていってしまっていた。

今日はお姉ちゃんもはやく仕事に行ったみたいで、ひとりぼっち取り残されたよう。

頬に手を当てると、湿った感触のまま口角はあがっているみたいだった。


手でそれを戻すと、ようやく私は泣けた。


目の前にある黒いパンは、ところどころはまだ食べられそうに見える。

だけど、喜んでこれを食べる人なんていないだろう。

これしか選択肢がないから、私は手に取るしかない。


このパンは私に似ている。


誰にも望まれていないけれど、仕方なくここにいる。




そんな私が、今日十六歳になった。

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