夢の終わりで、君に会いたい。
「おはよ」


きっちりと結ばれている忍の三つ編みを見ながら椅子に座ると、ホッと力が抜けた。

忍は、まだホームルームも始まっていないのに教科書を開いている。

制服をきちんと着て、丸メガネで小柄な忍は、誰が見ても優等生そのもの。

漫画の登場人物にいそう、とからかったりもするけれど、実際クラス委員もやっているし、成績が底辺の私なんかと中学時代から友達という点が、たまに不憫になることもある。

当の本人はそんなこと気にしたそぶりも見せず、勝手に引け目を感じているのはきっと私だけなんだろうけれど。


「あいかわらずはやいね」


ほんと、何時から来ているんだろう。

昔からキャラブレせず、真面目な忍は、最近さらにその勉強時間が増えているように見える。

まだ高校一年生の秋なんだから、受験勉強にはいささか気がはやいと思うんだけどな。


「あたし早起きだから」


自嘲気味に笑うと、開いていた教科書をパタンと閉じる。


あ、余計なこと言ったかな?


嫌味を言ってしまった罪悪感に、小さなモヤのかたまりが胸に生まれた。


いつだってそう。


つい余計なことを言ってはあとで後悔ばかりしている。
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