夢の終わりで、君に会いたい。
お父さんの帰りが遅くなったのは夏休みに入る前あたりから。

それがだんだん多くなり、やがて姿を見ることが珍しくなった。

連動するように、お母さんのイライラした顔を見ることも増えた。


「でもさ、お母さんとお姉ちゃんの三人ってのも悪くないよ」


むしろ、たまにお父さんが帰ってきた日のほうが、お母さんは不機嫌な顔をしているし、家の中の雰囲気が急に重くなっていづらくなる。


「そうなんだ」


自分から聞いたくせに、忍はますます落ちこんだ顔をしている。

この間、家でのごたごたを忍に話してしまったことで悩ませたのなら申し訳なかったな。


ほんと、余計なことは言わないほうがいい。


「離婚するんじゃないかな」


空気を変えたくて明るく言ってみたけれど、これも余計なひと言だったみたいで、瞬時に忍の頬が強張った。


「そんな……。まだ、わからないでしょう?」


なんで忍が傷ついた顔するの?


不思議に思いながら、そういうところが忍の優しいところなんだよね、と安心した気持ちになる。



一方で、その優しさを傷つけたような気まずさがにじんできた。
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