夢の終わりで、君に会いたい。
「親方は出てこなかったの?」


忍の言葉に、すぐにその姿が脳裏に映しだされる。

玄関先でドテンと横になっているその姿。

うれしさと悲しみの感情に一瞬言葉が詰まったけれど、

「もちろん出てきたよ」

なんでもない風に言った。

今では珍しい、という三毛猫についたその名前。

私が生まれた年にお父さんが拾ってきたらしい。

道端で雨の中うずくまっていたその子猫は、最初ピクリとも動かずに死んでいるのだと思ったそうだ。

「かわいそうに」と、思いながらもお父さんが横を通りすぎようとした時、急にその子猫は顔をあげて、

「ぶにゃー」

と、低いダミ声を出したらしい。


よくお父さんがその時のことを夕食のネタにしてたっけ。


思い出はいつだって温かくて、その分色を失くしたこの世界が余計に悲しく淡々と流れている。


「まさか子猫からあんなおやじみたいな声が出るなんて思いもしなかったんだ。それですぐに、『親方』って名前を思いついたんだ」


もう何度聞いたかわからないほど繰り返される出逢いの場面。
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