夢の終わりで、君に会いたい。
ニコニコと笑いながら、キャットタワーの中段でドシンと構えてこっちを見ている親方を見る。

お母さんに甘やかされて育った親方は、丸々と太っていて名前にピッタリの風格へ成長した。

いつも一緒にいるとわからなかったけれど、この間アルバムを見ていたら、年々その体重が増えているのが記録されていた。

それくらい、親方は家族みんなから愛されていたんだ、と思う。

親方は私たちをじっとにらむようにしながら大きなあくびをひとつ。

それを見て私も笑ったものだ。



――でも、もう親方はいない。



今年の春からあまりエサを食べなくなった親方は、じっとしていることが多くなった。

心配して動物病院へ連れていったお母さんに先生がくだした診断は『老衰』だった。


 『それって治らないってこと?』


そうたずねた私に、お父さんが困ったように肩を抱いてくれた。大きな手がいつもより強い力で肩を痛くしたのを覚えている。


そして、私の夏休み最後の日に、親方は静かに息を引き取ったのだ。


その日のことはあまり考えないようにしている。
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