夢の終わりで、君に会いたい。
「会いたい、って願っていれば見られるものじゃないの?」

実際、見たい夢を頭に思い浮かべながら寝ると、それに近い夢を見られることが多かった。

だから、親方に毎晩会えるわけだし。

当たり前のようにそばにいた親方がいなくなってから、ずっと後悔ばかりだった。

疲れて帰ればろくにさわることもせずに部屋に戻っちゃってさみしい思いをさせた、っていう思いが消えてくれなかった。

泣いてももう親方は生き返らないけれど、夢の中だけは違う。


だから、毎晩夢を見ることが楽しみで仕方なかった。


「そんな話聞いたことないよ。ね、そうだよね?」


最後の言葉は私の右隣で大あくびをしている浩太に向けられていた。


「は?」


自分が話題に入れられたことを知った浩太が、いぶかしげな顔をしてなぜか私を見る。

私じゃないってば、と指で忍をさすと、

「なんの話だよ?」

と、再びあくびをする体勢に入る。

開かれた口にたくさんの空気が吸いこまれる中、忍が、

「夢の話」

国語の先生もビックリの要約で答えた。
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