夢の終わりで、君に会いたい。
「ごめん。余計なこと言っちゃったね」

頭上からかけられる声に、心の中で「ほんとだよ」と悪態をつく。

夢の話とか親方のことは、他の人にはしてほしくなかったのに。

忍だから信用して言っているのに。

だいたい、こうやってバカにされることがわかっているからさっきだって止めたのに。


だけど、私は顔をあげてほほ笑んでみせる。


「大丈夫だよ。浩太はああいうヤツだから」


私の笑顔にホッとしたように忍は目を細めると、「うん」とうなずいてから前を向いた。

嫌な後味が体の奥に残る。

朝の光に溢れる教室で、自分だけがドロッとした汚れた水につかっているような気分。
忍にまでこんな気分をさせたくないから、私は笑ったのかな? 


自分でもわからない。


本当の気持ちをおさえるのはいつものこと。

だって、私の発言で誰も傷つけたくないし、そんな顔を見たくないから。

トイレから戻ってきた浩太がまだ何か言いたそうにこっちを見てくるけど、そしらぬ顔でやりすごす。



汚れた泥水が体にまとわりついてぬぐえない。





最悪な誕生日の朝。

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