夢の終わりで、君に会いたい。
終業のチャイムは軽やかに空間を震わせて消えてゆく。

クラスメイトの誰もが、息を吹き返すかのよう。先生ですらどこかうれしそうに見える。


そして、誰よりもこの瞬間を待っていたのは私だろう。


家に帰れば、夢の世界で親方と遊べる。

昨日はあまりさわれなかったから、今日はもっとそばにいられるといいな。

それにしても今日は本当に最悪な一日かもしれない。

三時限目のあと、トイレに行った帰りに担任の先生に呼び止められた私は、『中間テストの点数が前期に比べてずいぶん悪い』と、注意された。

たしかに自覚はあったけれど、そこまで悪いとは思っていなかった。

いつものようにヘラヘラと笑って『頑張ります』と、先生の求めている答えを言った私に先生は、『最近ぼんやりしすぎだぞ』とまで言ってきた。

せっかく朝の気分も少し持ち直してきたところだったのに、がっくりした気分。

夏に親方とお父さんがいなくなったことで、たしかにろくに勉強をしなかったから。

だけど、そんなこと言いたくない。

惨めだしはずかしいから。

いつも以上に、さっさと寝る時間になってしまえばいいのに、と思ってしまう。

夢の中では親方に会えるし、抱きしめてあげられる。


結局その日は、先生の忠告も聞かなかったことにしていつも以上にぼんやりと過ごしてしまった。



ただ時が過ぎるのを待ちながら、親方のことを考えた。
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