夢の終わりで、君に会いたい。
手はそのままに、足をもう少しだけ上部へ移動させると、上半身だけジャングルジムから飛び出した形になる。


圧巻だった。


まっすぐ先に、夕日が沈もうとしている。

燃えている輪郭はゆらゆらと揺れ、マントのように夕焼けを身にまとっている。

真上に顔をあげると、紺色の空はさらに濃さを増していて、飛行機のライトが小さな蛍のように飛んでいた。


「これ最高じゃん」


最悪な今日を覆すことができ、まるで勝負に勝った気分。

そうだよ。

今日起きたいろいろな出来事は、きっとこれを見せてくれるために必要なことだったんだ。

怒った顔のお母さんも、意地悪な浩太、心配してくれる忍もぜんぶが、夕日を見ることで解放された気分。

ゆっくりと町の向こう側に沈む夕日。

町の輪郭を左右の端から黒に染めてゆき、やがて空との境目を消してゆく。

いくつもの町の明かりが海に映る星のようにまたたいている。


夜の黒が、また昨日の夢とリンクする。


親方がそばにいるかのような感覚。

たしかにあの三色の毛に触れたんだ。

夢の中で親方は生きていて、だけど眠るまでは会うことができない。

いつも一緒にいたのに、もうこの世界にいない存在に会えるのなら、私は喜んで夢の世界に身を投げたい。


だって親方は大事な家族だから。
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