夢の終わりで、君に会いたい。
親方がいなくなって、お父さんも出ていってしまった。

今では、お母さんもお姉ちゃんも、親方やお父さんの存在すら、『もともといなかった』かのようにふるまっている。

流れてゆく時間の中、誰もが立ち止まってはいられない。

いなくなった人を『過去』にして、『今』を生きてゆくのだと、頭ではわかっている。



……わかってはいるんだけど。



さっきよりも冷たい風に、ふと我に返った。


夕日はいつの間にか消え去り、すっかりあたりが暗くなっている。

街灯のない公園が急に温度をさげたように感じて落ち着かなくなる。


「またボーッとしちゃった」


これじゃあ、忍や先生に言われるはずだわ……。

下におりようと右足をおろした瞬間、正面から突風のような強い風が殴ってきて、あるはずの棒に足がかけられずグランと上半身が揺れた。


「ひゃ」


しがみつこうとする手は、重みで体を支えられずあっけなく離れた。

体がうしろ向きに倒れてゆくのをスローモーションでも見ているかのように感じる。
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