夢の終わりで、君に会いたい。
「これお母さんと私で作ったんだよ。会社終わって急いで帰ってきたんだから」

普段は仕事で帰りが遅くなることの多いお姉ちゃんが自慢げに笑う。お母さんが照れたように、

「そんなのいいのよ。さ、お祝いしましょう」

と、進行する。

なんだか、むずがゆい気分。

はずかしいような、やめてほしいような。

最近よくそんな気分になるのは、きっと反抗期なのかも。


……って、数年前に終わったはずだけど?


腰の痛みが薄れてきたのと引き換えに、頭痛はひどくなっているけれど、この雰囲気を壊したくないから言わない。

ジャングルジムから落ちたなんて言うのもはずかしいし。

四人掛けのテーブルにひとつだけ空席がある。

飼い主を失くした犬のように、ポツンとさみしそう。

無口だけど、いつもそこにいたはずなのに、今はもういない存在。


お父さんは今頃何をしているんだろう……。


そして、いまだ片付けられないキャットタワーが窓の横にぽつんと置かれている。

違和感に人は慣れてゆき、いつからかそれが普通になる。


お母さんもお姉ちゃんも、そして私も。誰もが気づいているはずなのに言葉には出さずに、いなくなった人たちを忘れたフリで笑う。



そんな最悪の誕生日。
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