夢の終わりで、君に会いたい。
スイッチを入れると、ポットの上部にある小さなお皿が温かくなってゆく。

そこにオイルを垂らせば部屋に香りが漂うというもの。

机に並べたアロマオイルを左から順に見てゆく。


毎晩、この時間が楽しみで仕方がない。


「確か頭痛に効くアロマは……」


 『ラベンダー』『ペパーミント』『ローズマリー』あたりだったはず。

小さなビンに書いてあるラベルから名前を確認し候補の三つを前に並べる。


「どうしようかな」


その中でも『ラベンダー』は、痛みをやわらげる作用だけでなく、気持ちを落ち着かせる効果が強かったはず。


「よし、今夜は君が夢への案内役だ」


ひとりつぶやくと、オイルを垂らす。

まだ香りはしないけれど、そのうちポットが温まって私を夢へといざなうだろう。



夢を見れば親方に会える。



夢を見れば今日の全部を忘れられる。

部屋の電気を消そうとリモコンを手に持つ。


――トントン。

ノックの音にドアを見た。
< 37 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop