夢の終わりで、君に会いたい。
夢なので疲れたりはしないけれど、捕まえるまでに時間がかかりそう。

それでもはやく抱きしめたい一心で、もう足は階段をのぼりはじめていた。

チラチラと見えるその姿は、大渋滞の階段でちっとも進まない。

もっとはやく歩いてよね。

夢の時間は短いんだから、早く親方を抱きしめたいのに。

三階にようやくついて見回すけれど、親方はどこにもいなかった。


「昨日は遊園地で、今日は学校? どっちも広いから探すの大変そう」


つぶやいた瞬間、まわりの景色がパッと変わった。

さっきよりも雨の音が近くで聞こえる。地面をたたく音が、まるで現実のよう。

蟻の群れのようにいた生徒の姿はどこにもなく、下駄箱のそばにひとりぼっち。


また場面が変わったらしい。


きっと、親方を探して一階までおりてきたのだろう。

さて、どうしよう。きっとクラスメイトは教室に戻っているだろうし、一応戻ろうかな。

夢の中でも現実と同じ行動をとろうとする自分に呆れながら、階段をまたのぼりはじめた。


自分の足音と雨の音だけがこの空間に音楽さながら響いている。


もともと、薄いブルーの階段はさらに薄くなって、白色に近いように感じる。

いくつもの濡れた足跡があって滑りそうで怖いな。

それにしても階段をのぼってばかりの夢なんてツイてない。
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