夢の終わりで、君に会いたい。
三階まで来た私は、あらためて振り返るけれど、踊り場にもやはり親方の姿はない。


「もう……」

つぶやいた途端、

――キーンコーン。

チャイムまで鳴っているし。

なんで夢の中でも学校にこなくちゃいけないの。

明日は『親方の夢を見たい』と願うのと同時に、『学校の夢は見ない』ってのも追加しなくちゃ。


「おい、押すなってば」


「バカ、急げよ」


声が聞こえる。

向こうから数名の男子がはしゃぎ声をあげながらこっちに向かってくるところだった。

見たことのある顔。

ああ、浩太が入っている野球部の部員たちだ。

きっとチャイムの音に慌てているのだろうが、笑い声をあげておたがいに押し合いながら走っている。


あぶないなぁ。


そう思うと同時に、ふと踊り場に親方の姿が見えた。

ああ、やっぱりいたんだ。親方はまだこっちに気づいていない。

エサが欲しい時はすり寄ってくるくせに、普段はちっともそばに来ないんだから。

こっそり近づけば捕まえられるかも。

親方は私に背を向けて、体の毛づくろいに必死になっている。
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