夢の終わりで、君に会いたい。
きゅっと唇を結んだ私を一瞬確認してから、

「あのね……」

そこでお母さんは口をつぐんだ。

言ってもいいかどうか迷っているふうに眉間にシワを寄せた。


聞きたくない。


だって、わかるから。

元に戻れない、ってどちらかが思えば、それは現実になってゆく。

言霊のように、予感は確信になるから。

気づかないことにしてなんとか日々をやりすごせば、いつかはまた違う道が出てくるよ。


だから、言わないで。


すうっと息を吸ったお母さんが口を開いた。


「もう離婚するしかないって思うの」


「……離婚?」


包んだカップの温度が急激にさがってゆく。

熱い飲み物が好きなのに、どんどん熱が奪われてゆく。


「お父さんも迷っているようだけど、こういう状態が続くのはよくない、ってわかっているみたい」


「……」


どんどん冷めてゆく紅茶を見つめる。



茶色の海にうっすら揺れている朝の光が歪んでいる。
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