夢の終わりで、君に会いたい。
「鳴海、濡れるよ」


「あ、うん」


忍に促され、私もその波の一員になる。

こんなことって、あるんだ……。

ううん、ただの偶然にきまっている。

これまでもたまに似たようなデジャブは経験してきたわけだし。

夢ではこのあとどんな展開になったっけ? 

いつもと違い、夢の全体像が見えない。

おぼろげな記憶においても、ここまでは一緒の展開のような気がする。

じっとりと重くなった制服をハンカチで拭きながら、校舎に入った途端思い出す。


「……親方だ」


「え?」


忍が短くそう言って私を見たけれど、それには答えずに階段を見やった。

そうだ、夢の中では親方の姿が階段のところに。

そう思うと、いてもたってもいられない。忍を置いて、階段へ急いで向かう。


「ちょ、鳴海」


「ごめん」


急いでのぼろうとするけれど、のんびりとした動きで一向にあがれない。

ひょっとしたら親方に会えるかもしれない。


けれど、その気持ちは一段階段をのぼるたびにどんどんしおれてゆく。
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