夢の終わりで、君に会いたい。
そうだよ、これは夢じゃないんだ。

親方に会えるわけがない。

夢と現実を混合するなんて、私何やってるんだろう。

濡れた髪から落ちるしずくが、ますます惨めさを実感させる。

追い抜いてゆく生徒たちの邪魔になっているのに、動けないよ。


「鳴海ってば」


左腕をつかまれ振り向くと、いつの間にか忍が横にいた。

「もう」と、軽く息を切らせながら私の足もとを指さしている。

「それ、外履きのまま」


言われた意味を考えようと視線をおろして驚いた。


「げ」


本当に外靴のままだし。泥だらけの靴がまだ汚れを床に落としている。


「何度も呼んだのに、ぜんぜん聞いてないんだから」


親方に会える、という想いのまま階段をのぼってきちゃったんだ。

苦笑している忍が、

「履き替えに行くでしょ、付き合おっか?」

と、聞いてくるけれど、はずかしさのほうが先にたった私は首を横に振った。


「大丈夫。ちょっと行ってくる」


心配そうな忍に力強くうなずいてみせてから、階段をまたおりる。

人の波に逆らっておりるのに苦労しながら、なんとか下駄箱へ。
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