夢の終わりで、君に会いたい。
短くため息をついたお母さんがそのまま台所へ行くのを見ながら、通話ボタンを押した。


「もしもし」


『鳴海か。久しぶりだな』


「うん」


本当に久しぶりに聞くその声に、思わず声が震えそうになった。

お母さんはもう、洗い物をしているみたいだけれど、私の電話に聞き耳を立てているのは確実。


『今日、誕生日だろ。ごめんな、そっち行けなくて』


「あ、うん」


チラチラと台所に視線を向けながら、うまく言葉を選ぶことができない。

声だけなら、すぐそばにいるみたいなのに。


ねぇ、いつから距離だけじゃなく心も離れていったの? 


どうしてこんなに小声になってしまうんだろう。


だけど核心をつくのはタブーだと知っているから。


気づかないフリで、笑え。


そう、自分に指令を出す。


「こっちは大丈夫だよ」


そう、それでいい。

明るく元気そうに。

だけど笑っている顔をお母さんに見られないように。


『誕生日プレゼント、何か欲しいものあるか?』


元気な声に安心したのか、お父さんはうれしそうに言った。
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