ボーイズロード ―second season―
「ちょっと、タンバリン馬鹿にすんなよ。ほら、練習すればこういうこともできるようになるから。カラオケとは訳違うんだよ」


俺はタンバリンのふちを親指でこすって彼女に見せる。

ロールと呼ばれる奏法で、こすったときの振動から、音がシャラシャラと繋がったように聞こえるのだ。


「はあ」と気のない返事をしながら、麻由は見様見真似でタンバリンをこすってみた。


「ね、意外と難しいでしょ。でも練習したら麻由にもできるようになるから」

「まあ……そうですね」


リアクション薄いなあ。これ去年めっちゃ練習したのに。

その成果を若やニーナに見せたらすげーって言ってくれたんだけどな。


水澤麻由(みずさわまゆ)は、パーカッションに所属する1年生のうち、たった一人の初心者。


「教えることで琢哉自身の成長にもなるから」と、パートリーダーの先輩に言われ、俺が面倒を見ることになったのだ。

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