ボーイズロード ―second season―
音楽室を出た時点で、俺はかなりヘトヘトになっていたはずだった。


腹は減っていたし、麻由は練習の合間にため息ばかりついていたせいで、俺は結構イライラしていた。

それでも女の子相手だから、あまり強く言うことはできない。だから、なおさらストレスは溜まるばかり。


でも今さやかの話を聞いているだけで、さやかの笑った顔を見ているだけで、それらはだいぶ和らいでいった。


「……あれ、気づけばしゃべってんのあたしだけだね」

「ホント、相変わらずよく動く口だな」

「いいじゃん、頬の筋肉使ってるから、そのうち小顔になるかもよ。それでね、うちのお父さんがね……」


「まったく、しゃべりすぎ。いったん休憩」


俺は話し続けるさやかの口に人差し指を当てて、その口の動きを止めた。


そしてゆっくりと唇を重ねた。

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