ボーイズロード ―second season―
自転車を店舗に寄せて停め、鍵をかける。

気合を入れたつもりで帽子を深くかぶり直してから、店舗の入り口に向かった。


信じられないくらいに心臓の音は高鳴っている。

今からこんなんで、いざさやかの身体を目の前にした時はどうなっているんだろう。


入り口の自動ドアですれ違った人に声をかけられ、悪いことをしていたみたいにドキッとしてしまう。


「あれ、琢ちゃん?」

「え!?……わ、若……」


しまった!俺としたことが大誤算!

この辺りは家から近いとはいえ、俺の小学校の学区外だったから安全だと思っていたのに。

若の家が市民会館に近いって言ってたんだっけ……


「帽子かぶってたから、わからんかったよ!なんでこんなところにいるの?琢ちゃんちの近くにもコンビニあったよね?」


やばい、言い訳なんて考えてないし。そりゃ、そうやって疑問に思うのが普通だよね。


「いや、たまたま通りかかっただけ。コーラ買おうと思って……」

「……ふーん、したらまた休み明けにね」


言ったあとに苦しい言い訳だと思ったけど、若は気にしていないみたいでよかった。

だけど今日はもう無理だ。本当俺ってチキンだよな……


若に言った通りにコーラを一本だけ買って、家に帰ることにしたんだ。


……あーあ、情けないな。

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