Deep lover...
直先輩と付き合い始めて2ヵ月目の5月24日。



あたしの財布の中には

あの日麻生君から貰った、ライブのチケットが入ったままだ。


捨てるにも、捨てれなかった。




その日も輩は、家まであたしを送ってくれた。


もう2ヵ月も経つというのに

まだ…手も繋いでいない。







「美結」


「ん?」


少し口ごもって、あたしの顔を真っ直ぐに見て言った。


「あのさ、今度、俺の家来ない?」


「ぇ…」


唐突な言葉だったけど、それが何を意味しているのか解った。


「や、美結が嫌なら別にいーんだけど」


あたしは返答に困って、俯いた。

とにかく何か言わないと、と思って顔をあげた。





















その時、見つけた。
































翔の姿を…。





























「美結?どうしたの…?」


あたしが茫然と何かを見ているのに気付いて、先輩も後ろを振り向いた。


翔の視線が先輩に移り、少しずつ近づいてくる。


























「ちょっとおいで」

























翔はあたしの手を無理矢理引いて歩きだした。

温かくて、大きな手…。














一年ぶりに感じた、人の手の温もり。

































翔の温もり…。
< 17 / 37 >

この作品をシェア

pagetop