Deep lover...
あたしは黒崎 美結<クロサキ ミユ>。
大学にバイトと、普通の生活を送っている。
何も変わらない日々だけど
何かをしていれば、翔の事を考えないでいられると思った。
―――…
「美結、また彼氏と別れたんだって?」
「…うん」
「それで一体何人目よ…呆れるよホント」
「だって…」
友達の言葉に一言返事で返す。
その話を突かれるのは、正直痛い。
「…翔君が好きなら、なんで別れたりしたのよ。
好きなら別れなきゃよかったのに…」
「あたしだって…!!
ホントは別れたくなんかなかったよ…」
ホントはね
ずっと傍に居たかったんだよ…?
「…そんな美結に、いいお知らせ持ってきたの」
「何…?」
差し出されたチラシに目をやる。
「Heavenly…?これって…」
彼の名前と、バンド名らしき名前。
「そう。翔君、今度ライブやるんだって。
行ってくればいいじゃない」
一年。
ようやく、翔の世界を見つけた。
「あたし…行かない」
「え。なんで…?」
「だって、今更どんな顔して会えばいいのかわからないもの…。
それに、夢に近づけてるって事がわかっただけでいいよ」
「…そう」
聞いた話によると、翔のバンドは何度かライブをやっていて
結構人気が出てきているらしく、ファンも多いとか。
そんな中にいたら、あたしもファンの一人でしかなくなる気がして…
どうしても、躊躇ってしまう。
ホントは会いたいけど。
会えない。